針葉樹と広葉樹の違いとは？葉の形や構造の違いなどを解説

木について　2024.12.4

針葉樹と広葉樹がともに生息する混合林の様子北欧の森

木にはさまざまな種類がありますが、大きく針葉樹と広葉樹の２つに分けることができます。２つの間には見た目の違いだけでなく、外見からはわからない内部構造の違いもあります。

この記事では、針葉樹と広葉樹の違いを目に見えるものと目に見えないものに分けて詳しく解説。身近なのに意外と知らない、木の性質の違いを紐解いていきましょう。

針葉樹と広葉樹の違いを徹底比較

	針葉樹	広葉樹
生息地	北欧、ロシアなどの寒冷地や高地が中心	東南アジア、南米などの温暖な地域が中心
葉の形	細長い針状	広い形状
樹形	空に向かって伸びる円錐形	横に広がる傘のような形
木目	直線的でシンプル	複雑な模様
色味	明るいものが多い	明るいものからダークなものまでさまざま
重さ	軽い	重い
硬さ	やわらかい	かたい
加工のしやすさ	加工しやすい	加工しにくい
主な品種	スギ・ヒノキ・マツ	ナラ・ウォールナット・ブナ・サクラ

上記は針葉樹と広葉樹の一般的な違いをまとめたものです。ただし、樹種によっても特徴が異なるため、これらの特徴が当てはまらない種類もあります。

針葉樹と広葉樹の目に見える違い３選

針葉樹と広葉樹の見た目を比較するイメージ北欧の森

一覧で紹介した針葉樹と広葉樹の違いのうち、特徴的な項目について詳しく紹介します。まずは、特にわかりやすい違いである「生息地」「葉の形」「樹形」の３点について見ていきましょう。

【目に見える違い①】生息地

針葉樹は比較的寒冷な地域の生育に適しており、主な生息地は北欧やロシアなどの高緯度地域です。日本でも北海道、本州の高地などでよく見られます。一方の広葉樹は暖かい地域に分布しており、東南アジアや南米などの熱帯雨林で多く見られます。日本における主な生息地は本州・四国・九州の平地などです。

寒冷な地域と温暖な地域という分布の違いが、針葉樹と広葉樹の見た目の違いにも大きく関係しています。

【目に見える違い②】葉の形

針葉樹はその名のとおり、葉が針のように尖っている種類が多くなっています。対する広葉樹は、全体的に平べったく大きな葉を持つのが一般的です。こうした葉の形の違いは、生息地の気候に由来すると考えられています。

針葉樹の分布する寒冷地や高地は雪が多いため、冬になると葉に雪が積もっています。葉の表面が雪で覆われてしまうと光合成ができなくなってしまい、冬を乗り越えることができません。
そこで、雪が積もりにくい尖った形状の葉をつけるようになったといわれています。また、針状にすることで葉の表面積を増やし、より効率的に光合成ができるよう進化したという説もあります。

これに対し、広葉樹が分布する暖かい地域は日照時間が長く、日差しも強いのが特徴です。たっぷりの日差しを存分に取り込むため、面積の大きな平べったい形の葉になったとされています。

【目に見える違い③】樹形

樹全体の形も針葉樹と広葉樹で大きく異なります。針葉樹の樹形は縦に長い円錐形なのに対し、広葉樹の多くは横に広がる傘のような形をしています。これも生息地の気候による違いという説が有力です。

雪の多い地域に分布する針葉樹は、先端を尖らせることで、雪が積もりにくいよう進化したと考えられています。さらに細かく見ると、中心に太い幹が１本通っていて、そこから円状に枝が伸びています。

一方、広葉樹の分布する高温多湿な地域はほかの樹木や植物が生い茂る環境。そのような環境下でできる限り多くの日差しを取り込むため、横へと広がっていったのです。

針葉樹と広葉樹の目に見えない違い３選

見た目が明らかに違う針葉樹林と広葉樹林の見えない違いとは？北欧の森

針葉樹と広葉樹には上記で紹介したわかりやすい違い以外にも、構造的なものや生物学的なものなど、大きな違いが３つあります。

【目に見えない違い①】内部の組織構造

植物の進化の観点から見ると、針葉樹のほうが誕生は早く、後から登場した広葉樹はより進化した形態とされています。

どちらも「種子植物」（種で増える植物のこと）の一種で、そのうち針葉樹は「裸子（らし）植物」、広葉樹は「被子（ひし）植物」に分類されます。なお、一部例外があることは押さえておきましょう。

裸子植物・被子植物とも、内部に水分や養分を運ぶ仕組みが備わっているのですが、作りは両者で異なります。被子植物は水分を運ぶ「道管」と呼ばれる管が内部を通っているのに対し、裸子植物の多くは道管が未発達で「仮道管」と呼ばれる管が通っています。

この仮道管は水分を運ぶだけでなく、植物の構造を支える役割も果たすものです。そのため、裸子植物である針葉樹も仮道管が樹全体を支える構造になっています。仮道管が２つの役割を担うため、針葉樹は比較的シンプルな構造といえるでしょう。

一方の広葉樹は被子植物であることが多く、道管とは別の「木部繊維」と呼ばれる組織が樹を支えています。水分を運ぶ部分と樹を支える部分が分かれているため、広葉樹は針葉樹よりも構造が複雑です。

【目に見えない違い②】花粉を運ぶ方法

針葉樹と広葉樹では生殖の方法にも違いがあります。

針葉樹の多くは「風媒（ふうばい）」と呼ばれる方法で生殖を行います。風媒とは、風の力を利用して花粉を運ぶ方法のこと。風まかせだと花粉がめしべにたどり着く確率が低いので、軽い花粉を大量に生成しなければなりません。スギ、ヒノキなど針葉樹由来の花粉症が多いのはこのためです。

対する広葉樹の多くは、虫の力を借りて花粉を運ぶ「虫媒（ちゅうばい）」で生殖を行います。花や蜜で虫を誘うことにより、風媒よりも効率的な生殖が可能です。

ただし、風媒なのか虫媒なのかは、生息地によって例外が見られます。基本的には風媒から虫媒に進化したと考えられますが、生息環境に合わせてあえて風媒を選んだと考えられる樹種もあるため、一概には言えません。

【目に見えない違い③】木材としての硬さ・重さ

先述のように針葉樹と広葉樹は内部組織が異なるため、木材として加工する際の硬さや重さも違います。

針葉樹は組織が単純で、細胞の密度もあまり高くありません。密度の低い細胞の間に多くの空気を含むので、木材としてはやわらかくて軽い傾向にあります。

対する広葉樹は組織が複雑で、多くの種類の細胞がぎっしりと詰まっています。空気の入る隙間が少ないので、針葉樹の木材に比べて硬くて重い傾向があります。

ただし、広葉樹は針葉樹より進化した形態なので、環境に適応する形で多種多様に分かれているのが特徴です。

具体的には、針葉樹に分類されるのが540種程度なのに対し、広葉樹は約20万種に上るともいわれます。そのため、重いもの・軽いもの、かたいもの・やわらかいものなど、樹種によって特徴に大きく幅があります。

針葉樹と広葉樹の違いから植物の進化の歴史を感じてみては？

針葉樹と広葉樹には、目に見える明らかな違い以外にも、内部構造などに大きな違いがあります。その背景には、長い年月をかけて環境に適応してきた、植物の進化の歴史がありました。

南北に長い日本では、針葉樹も広葉樹も身近な存在です。それぞれの違いを実際に目で確かめながら、木の奥深さに想いをはせてみてはいかがでしょうか。